♪校長室カンタービレ♪ 第16号
平成29年10月6日
前号の続きです。
全盲のピアニスト辻井伸行さんは、インタビューの中で次のようなことを語っています。
「音楽には国境がないように、障がいも関係ないと思っています。障がいがあるから特別な音が出せるとか、そういうふうに思ったことはなくて、一人のピアニストとして聴いていただきたいなって思っています。」
皆さんは障がいを有する人たちに対して、かわいそうだとか大変だなと感じていませんか?そのように思うことは自然なことです。でも、そのことに対して偏見を持ったり、差別をしたりすることは絶対にあってはならないことです。
人によって幸せの感じ方は違いますよね。幸せの定義って何なのでしょう。周囲からは気の毒だなと思われていても、本人はそう感じていないことはたくさんあります。周囲から幸せだなと思われていることでも、実は本人はそう感じていないことがあるかもしれません。
大切なのは、自分の置かれている環境の中でいかに精一杯生きているか、自分らしく生き抜くためにいかに努力を重ねているか、ということではないでしょうか。このことは障がいの有無には関係ありません。一人の人間として追求し続けなければならいことだと思います。
辻井さんは、自分を特別扱いせずに一人のピアニストとして音楽を聴いてほしいと言っています。彼のこの言葉は、本当に深く、重いものを感じます。そして、自分は努力してきたという自信があるからこそ、この言葉を発することができるのではないかとも感じています。
辻井さんは、次のようにも語っています。
「お母さん、僕は目が見えない。でもいいよ、ピアノが弾けるから。」
障がいを有する人たちに対し、様々な支援を行うことは必要です。どう支援するかを考えるのは、とっても大切なことです。ただ、その思いの中に、かわいそうだからこうしてあげるとか、こうしてあげると人助けになるでしょうとかいう、「してあげる」という上から目線はなくしていかないと、本当の意味での共生社会は築けないと考えます。
本校では、高等学校における特別支援教育を研究・推進していますが、特別な支援が必要な生徒に、適切な支援を行うことのみが目的とは捉えていません。この教育を通して、障がいの有無にかかわらず、すべての人が明るく自分らしい人生を送ることができる社会、共に学びあい高めあっていくことができる社会になることを願っています。それも敢えて行動するのではなく、当たり前に、自然にできるように・・・。