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校長室だより ♪校長室カンタービレ♪ 第40号が発行されました

♪校長室カンタービレ♪ 第40号

平成30年10月11日

第38号で「オノマトペ」について記述した際、日本の美意識について少し触れました。今号は、この日本の美意識について、私なりに少しだけ掘り下げてみたいと思います。

そもそも美意識とは何なのでしょう。人が美しいと感じる心の働き、つまり何を美しいと感じるかということです。当然のことながら、美しいと感じるものは個人によって異なります。たとえば、規則正しく整然と並んでいるものを美しいと感じる人がいれば、規則性のない並びを美しいと感じる人もいるでしょう。左右対称のかたちに美を感じる人も非対称に美を感じる人もいます。また、派手で豪華なものを美しいと思う人もいれば、シンプルで質素な感じを美しいと思う人もいます。隙間がなくすべてが埋め尽くされているものを美しいと感じる人も、空白や余白があることによって美しさを感じる人もいるはずです。

このような個人の美意識に先天的なものがあるかどうか私にはわかりませんが、それぞれの生まれ育った自然・社会・文化・教育などの生活環境が大きく関わっていることは間違いないと思います。

我々日本人にとって、「花」と言えば「桜」ですよね。桜は一年のうちのほんの一瞬しか咲きません。桜前線という言葉もありますが、日本人は何か月も前からその瞬間を楽しみにし、花見を計画します。最近は桜の美しさより花見自体を楽しみにしている人が多いようですが…。そしてあっという間に散っていく桜に「はかなさ」や「無常観」を感じるのです。その桜の「はかなさ」に「もののあはれ」(しみじみとしたおもむき)を感じ、美しさを見出すのです。

「あはれ」以外にも、無常に美を見出そうとする日本の美意識・文化を表す言葉として、「幽玄(ゆうげん)」や「侘び寂び(わびさび)」などがあります。

「幽玄」は「神秘的な深み」とも言われますが、「奥深いおもむき」を表します。実際に目に見えるものを表すのではなく、「その奥に人間が感じる美しさ」を表す言葉です。文芸・絵画・芸能・建築等の芸術領域でよく使われます。

「侘び」は「簡素な中に見出される静かで落ち着いたおもむき」を表し、「寂び」は「時間とともに古くなったもののおもむき」を表します。この侘びと寂びを一緒に使い、「簡素でありながらも静けさや寂しさを感じるものに美しさを感じる」という意味で「侘び寂び」と言います。茶道でよく使われる言葉です。

このように、マイナスのイメージがあるものにプラスの価値を見出そうとするところに、日本人の美意識の特徴の一つがあるのかもしれません。

明治の文明開化以降、西洋文化を積極的に取り入れた日本ですが、日本の風土や慣習の中で培われた日本独自の伝統美は、間違いなく残っています。ただ、日本の伝統文化は一部の人たちのみで継承されているのが現状で、一般の人たちには縁遠いものとなっています。私はせめて、日本独特の感性や美意識だけは持ち続けていたいと考えます。それを伝えていくことも教育の大きな役割だと考えています。

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