♪校長室カンタービレ♪ 第32号
平成30年6月1日
前号で、「聞く」と「聴く」の違いについて音楽的な側面から書かせていただきました。今号では「聴く」について、コミュニケーションという側面から書かせていただきます。
学校の重点目標において、「コミュニケーション能力の育成」という言葉がよく使われます。本校の教育方針の中にある重点目標にも、この言葉が長年に渡って使われています。より良い人間関係を形成する上で、コミュニケーション能力が重要となることは当然のことです。では、コミュニケーション能力とは具体的にどのような力を指すのでしょうか。
言語によるコミュニケーションに限って言えば、「伝える力」と「聴く力」の2つになると思います。「伝える力」とは、自分の意志や考えを言葉で表現して相手に理解してもらう力のことであり、「聴く力」とは、相手の言葉を聴いて何が言いたいのかを理解する力のことです。そして、「伝える」と「聴く」が双方向にバランスよく図られている状態を、「言葉のキャッチボール」ができる状態と言います。一方的に自分の考えを伝えるだけでは「言葉のキャッチボール」ができません。相手の真意を読み取る「聴く力」が非常に重要ということです。
あるビジネス研究家によると、「聴く力」の段階を次のように分析しています。
人の発言を聴く意思を持っていない状態→人の発言を聴いているつもりの状態→人の発言を自己解釈で聴いてしまう状態→相手の真意を察することができる状態。皆さんは自分の「聴く力」が、今どの段階にあると思いますか。もし自分に「聴く力」があると思っていても、相手が真意を理解してくれない人だと判断したら、「聴く力」がない人だと評価されているかもしれません。
これまでの教育は、コミュニケーション能力の育成として、「伝える力」を身につけることを重視してきたと思います。しかし今後は、「伝える力」とともに「聴く力」を育てる教育を実践していく必要があります。そして、我々教師自身も「聴く力」を身につけ、生徒や保護者そして同僚等と双方向のコミュニケーションを図り、「言葉のキャッチボール」ができなければならないと考えます。
「聴」という漢字は、漢字の旁(つくり)が同じことから、徳を持って耳を傾けると言われます。また、「聴」を分解すると、耳+十(じゅう)+四+心で成り立つ、つまり耳だけでなく十四の心(諸説あるうちの一つとして「受容する心、共感する心、好意的な心、興味を示す心、肯定する心、優しい心、理解する心、ゆったりした心、誠実な心、先入観のない心、明るい心、公平な心、信頼の心、感謝の心」)を持って聴くことを表しているとも言われます。さらに、同じような分解論から、「聴」は耳+目と心で成り立っているため、耳だけではなく、目で見て心で感じることが大切だと言われます。なんだか金八先生のような話になってしまいましたが、私も相手の言葉に耳を傾け、相手の心に寄り添いながら聴くことを常に意識していきたいと思います。とにかく、五感をすべて使ったコミュニケーションに、お互い努めていきたいものです。